ガマガエルと小説など

ガマさんとガエルさんが出てきて私の書いた小説などを紹介します

「沖縄訴訟回想」①(ノンフィクション)

 

Tさん「こんにちは」

 

Nさん「こんにちは、久しぶり」

 

Hさん「おせえよ、、もうゴーヤチャンプル食っちまったよ」

 

Tさん「わるいわるい、ちょっと道が混んでてな、酒買って来たよ」

 

Nさん「何にする?ビンビール?焼酎?サワーなんてのもあるぞ」

 

Tさん「おー、豪勢だねー。まずはビンビールかな。俺の買ってきた焼酎もうまいよ」

 

Nさん「じゃあ、ビンビール一本ね。あとはゴーヤチャンプル一つ追加」

 

店員さん「ビンビールお待たせしました」

 

Tさん「ありがと」

 

Hさん「戦争終わって5年もたつんだな」

 

Nさん「はやいもんだな」

 

Tさん「本土は、新しい建物がバンバン建ってきたぞ。すぐ立ち直ってきちまうよ」

 

Hさん「本土は、はやすぎるわな」

 

Nさん「沖縄だって結構、立ち直ってきているぞ。ただ、まだ、戦争の残骸が残っている」

 

Tさん「本土とは違って、アメリカが上陸しちまったからな。白兵戦、集団自害、沖縄制圧、ひどい目にあったな」

 

Hさん「その上、沖縄にアメリカ軍基地が入ってきちまった。あんな目にあわせておきながらいけしゃあしゃあとどういう神径しているのかね」

 

Nさん「ちっ、ふざけやがってこっちは、あのアメリカ軍上陸を体験しているんだ」

 

Tさん「そうか、名倉、沖縄本島に残った組だったか。やばいな。どうだった。でも、話したくは無いか」

 

Nさん「別に話してもええよ。こういうことは忘れちゃいけないんじゃ」

 

Hさん「オレも聞きたいわ。沖縄県民として知らなきゃいけんわ」

 

Nさん「上陸の一週間前、本土にアメリカ軍が上陸してくるという噂がたった。その後、音沙汰が無く一週間がたったあれは、7月28日だったと思ったよ。ラジオで、アメリカ軍上陸の一報が入った。急いで、外に出てみたが、近くではないらしく、何も起こっている様子は無かった。ただ、空が曇っていて少し暑かったか、いや覚えてないが、何かいやな予感がオレはしたんだ」

 

Tさん「曇っていたか、こわいな」

 

Hさん「それでどうなったんだ」

 

Nさん「沖縄本島組も、日本軍に呼ばれてアメリカ軍のいる南方へ向かうことになった」

 

Tさん「本当にいったんだな」

 

Hさん「よく生きていたな」

 

Nさん「ちゃちゃ入れるなや。南方に向かいだすとポツポツと雨が降り出してな。ジープの窓に雨が当たるのを見ていたのを覚えている。気がつくとジープから降りるように命令が来て、降りてみると10キロくらい先だろうか、爆発音が少しして、かすかに人の悲鳴のようなものが聞こえたような気がした」

 

Hさん「やばいな、これから一週間続くのによく生きてたな」

 

Tさん「たしかにな」

 

Nさん「色々あるんじゃ。とりあえず、点呼を取って部隊で何をやるかを伝えられる、わしは、町民を非難させる役になったんじゃ。島から脱出すればいいんじゃないかという案が浮上して、9割は最終的に島外に脱出することができた…」

 

Tさん「9割逃げられたんだな」

 

Hさん「一割は?」

 

Nさんが横に首を振る。

 

Tさん「ふざけんなよ。許せねえ」

 

Hさん「ふざけやがって」

 

Nさん「オレは本島に残ったんじゃ。4日目の朝、外で爆発音が聞こえた。外に出てみるとかすかに悲鳴が聞こえたと思う。爆撃があり、建物の陰に隠れる。1キロ先に本隊が来ているとの知らせが入る。さすがに死ぬなと思ったよ。近くの民家で悲鳴が聞こえ、いってみることになる。3人一組で民家近くまで来るとアメリカ軍らしい影を見た。民家に入ってみると、もうアメリカ軍の姿は無く。死体が3つ転がっていた。来るのが少し遅かったかとつぶやいた。他の一人が来たのが少しはやかったかとつぶやいた」

 

Hさん「ひどすぎるな」

 

Hさん「許せん」

 

Nさん「少しして、防衛線を20キロ下げることとなり、いったん退くこととなった。一日後、軍のキャンプが直接攻撃をうけ、隊の連中を見失い、命令が途絶えることに町の中心部から少し行ってみると遠くに戦車の姿を見てしまった。銃撃をうけ、3人がじりじりと近ずくいてくる。オレはこの事態を不可能と見たよ。じりじりと後ろに下がりながら、銃撃しようかと一瞬頭をよぎった。5メートル離れたときに、後ろを向いて一目散に逃げ出したよ。銃撃音が、25,6発して足にかすったな。何とか逃げ延びて他の隊に合流することができた。そして、島外脱出して今ここにいるわけだ。あのとき、死ぬべきだったかもしれん」

 

Hさん「本当に実際戦っているとはすげえぜ」

 

Tさん「これがそのときの傷跡か、やばいな。死の瀬戸際を体験したんだな」