ガマガエルと小説など

ガマさんとガエルさんが出てきて私の書いた小説などを紹介します

「沖縄訴訟回想」⑤(ノンフィクション)

沖縄県那覇市

HAさん、Nさん、HOさんが、著名運動もかねて反対デモをおこなっている。

 

関係者「基地のない沖縄をめざそう」

 

全員「おお~」

 

関係者「軍を追い出して、沖縄に基地のない生活を」

 

全員「おお~」

 

県庁前、ゴーヤ踊りと軽い訴えをしていると、警察が急に押しかけてくる。

 

Nさん「何するんじゃ」

 

HOさん「何をする、ここは解散して逃げよう」

 

HAさん「日本は法治国家だ。これは強引すぎるんじゃ」

 

HOさん「HAさん、こっち」

 

HAさん「わかった、やばい、Nさんがいない」

 

腹ばいにされて後ろ手にされるNさん、連行されてしまう。

 

Nさん「なんでじゃー、はなさんか」

 

 

仮釈放が受理されず、3日後、刑務所に拘留される。面会所で3人がおちあう。

 

HAさん「こんにちは、…なんていっていいか」

 

Nさん「…すまんな、オレがどじっちまった」

 

HOさん「そんなことないわ、こっちに非はない」

 

HAさん「そうじゃ、デモして何が悪い」

 

Nさん「そやな、訴訟負けるわけにはいかない。HAさんがんばってくれよ」

 

HAさん「わかっているわ。ここが正念場だ。何とか踏ん張るぞ」

 

Nさん「その息じゃ、わしがいなくても勝てよ」

 

HOさん「いなくても勝つわ、沖縄が勝つ」

 

HAさん「沖縄が勝つのは、当然よ」

 

Nさん「勝って、焼酎飲んで、ゴーヤチャンプル食うわ」

 

守衛「そろそろ面会時間は終了じゃ」

 

HOさん「仕方ない、そろそろ帰るわ」

 

守衛「帰りなさい」

 

HAさん「もう少しいいじゃないか、わかったよ帰るわ」

 

Nさん「HAさん、HOさん元気で」

 

守衛「黙って」

 

外に出て二人でしばらく歩く。そして、

 

HOさん「ふざけんなよ、Nさん捕まっちまった」

 

HAさん「ちくしょう、あのように強引だとはね。拘留長引くかな。言い過ぎたかも」

 

HOさん「拘留のびるか…。ちくしょう、負けるわけにはいかないのに。Nさん、何もしてないのに捕まっちまった。悔しいわ」

 

少し泣き出すHOさん

 

HAさん「泣くなよ。くそ、負けねえぞ」

 

雨がぽつぽつと降り出し、本降りになる。そこに立ち尽くす2人。

 

Nさんが3ヶ月拘留、裁判は一部敗訴が決まり、上告して最高裁判所で争われること

になる。Nさんが帰ってきていちどうはほっと安堵する。最高裁で争われる中、沖縄

でHOさんが街頭演説に入る。

 

HOさん「今日、東京の最高裁判所で訴訟が行われています。そこにエールというかわ

かりませんが、この演説をおくろうと思います。沖縄は、太平洋戦争で軍の本土上陸を

経験しました。白兵戦、集団自害など、さまざまな苦難にあい、終戦をむかえました。

終戦から、一時、保護され、独立にも10余年かかりました。独立しても、なお、基地

はあり続け、私たちの生活は何か軍にはばかりながらの生活になっています。自国の軍

ならば、そこまで気を使わないでしょう。他国の軍との二重支配という関係が、私たち

がなんとなく滅入るもの、私たちを束縛するものではあるかもしれません。沖縄の本土

を踏みにじったアメリカ兵が、沖縄に戻りそこを支配する、戦争の根本には、暴力、兵

器、殺戮、支配といった人間特有の醜さをゆうしていると思います。戦争だから、相手

に暴力を振るってもいい、戦争だから兵器を使って人を攻撃していい、戦争で勝ったか

ら、支配していい。戦争は、暴力の肯定、兵器の肯定、殺戮の肯定、支配の肯定とは違

います。戦争自体が、暴力かもしれませんが、肯定しているわけではない。(戦争に勝

てば、支配していいかもしれませんが、戦争自体が支配を肯定しているわけではないと

は思います。戦争≒暴力ではあるかもしれないが、暴力を肯定するわけではないはずで

す。戦争に勝ったから、暴力をふるっていいわけではない。支配していいはあるかもし

れない。でも、)支配はしないのが、双方にとって楽ではないかと思います。基地がな

いことで、軍からの支配を抜けることができます。支配からの脱却は、私たちに自由を

与えるでしょう。二重統治は、論理がふえるともいえます。沖縄が沖縄にもどる、真の

独立は基地の撤廃にあると思います。平和とは何でしょうか。平和とは戦争がないこと

だとは思います。基地がないことが沖縄の平和、しいては日本の平和に近づくでしょ

う。ただ、軍があったときの戦争回避や抑止力といったものはなくなります。自由は得

ますが、自分自身で国を守る、平和憲法で外交をする難しさはあるでしょう。しかし、

独立国である以上、アメリカの傘で生きるわけにはいかない。私たちは独立国、日本国

の一員です。なんとかして、基地問題を解決して、新たな地平としての日本をつくって

いきましょう。わたしたちが新たな歴史を作る、その気概が必要なのです。以上です」

 

拍手が少し起こって、堀内さん壇上から降りていく。警察が押し入る。逃げるHOさん

 

HOさん「助けてー、逃げるぞ」

 

                                  (終了)

 

 

 

  「沖縄訴訟回想」③(ノンフィクション)

 

 

HAさん「原告のHAです。国家間の問題は重大問題です。われわれは、その問題を軽視

するわけではなく、重い問題だと思っています。ただ、先ほども述べたと通り、基地問

題に触れる以上は、外交問題に触れることにほかなりません。沖縄は、基地をなくした

いのです。基地がなくなれば、沖縄県民の安堵は、ひとしおでしょう。先ほどの原告側

Bの弁論に続く形になりますが、軍の支配について述べたいと思います。沖縄にいて感

じることは、基地の近くでは、なんとなく気を使って騒音などにも敏感になるようで

す。兵士もストレスがたまって、ドライブに行って事故を起こしている。事故の被害者

は、軽い怪我ですんでいるかもしれない。しかし、もし、加害者が、ほとんど何もな

く、軍に帰っていったらこっちも腹立たしい。支配している側と、されている側では感

じ方が違う。支配側は、支配しているから当たり前に事故を穏便に処理しよう。何か言

ってきては面倒くさいと思うかもしれない。支配されている側は、事故をしっかり調

べ、処罰し、あわよくば基地の撤廃も考えたい。支配と被支配は、どんな場所でも起こ

りえる問題ではある。この支配の構造は、ないほうが楽だし、永久基地は、あまり得策

とはいえない。それなので、沖縄県民として永久基地の撤廃を要求する。果たして、本

当に基地が必要なのか。再考していただきたい、以上です」

 

判事A「はい、了解しました。沖縄が基地を必要としていないことは、伝わりました。

外交問題であっても、基地問題に取り組む以上、避けては通れないのはわかりました。

支配構造に言及し、永久基地は得策ではないといわれましたね」

 

HAさん「はい」

 

判事A「それは、そうだと思います。ただ、国家間の問題です。簡単には、通らないと

は思います。次は、弁護側の方です。反対弁論をどうぞ」

 

名倉さん「こえーー、緊張したわ、やったるわ、やったるわ」

 

堀内さん「オレは、1回死んだわ。原田さんよくやったわ、拍手しちゃう」

 

法廷内に、ぱちぱちと拍手がこだまする。

 

弁護側B「弁護側Bが反対弁論にはいります。基地のまわりの住民のデータはとってあ

ります。比較的生活満足度は高いと出ています。基地はさほど気にならず、騒音なども

夜は比較的少ないようです。少し自治体に対しても予算が多く割り振られています。何

も不服がないように見えます。支配、被支配についてふれていましたが、永久基地であ

ることが、沖縄県民の生活安定につながるとは思えませんか。どちらが楽かはわからな

い気がします。以上です」

 

判事A「わかりました。今日の法廷は、予定時刻を過ぎましたので閉めようと思いま

す。次回は、4日後です。では、解散」

 

とある新聞社。

 

A「もう、2回目の裁判終わったか」

 

B「はやいものだな。すぐ立ち消えになるかと思ったけど、原告側がんばるな」

 

A「ありえない事態だよ。何が起こっているかわからない」

 

C「今情報がはいった、政府があの訴訟、激怒しているようだぞ。沖縄の反対運動をつ

ぶすようだ。警察が動くぞ」

 

B「まじか、やばいな。さすがにもう無理か」

 

A「わからねえ、うーん、法廷で何が起こっている」

 

C「スクープのにおいがする誰かいくか」

 

B「オレが行くよ。少し調べてからね」

 

A「わかった。オレも行くかな」

 

 

 (つづく)

「沖縄訴訟回想」③(ノンフィクション)

 

 

 

原告側A「原告側のAです。軍が守ってくれているという考え方は一部にはあります。

ただ、守ってくれるわけではないのです。軍がいれば、標的になる可能性もあります。

アメリカ軍が、日本が攻撃を受けた場合、どう対処するかはわかりませんが、守ってく

れるとは、条項のどこを見てもかいてはいません。彼らは、軍の規律を見れば、自分た

ちの身を守ることが第一優先なのは明らかです。次は原告側はBにかわります」

 

判事B「それでは、原告側のBさん、対抗弁論ですが、その前に、弁護側から反対弁論はありますか、あれば、どうぞ」

 

弁護側B「弁護側のBが話します。軍がいれば、日本自体が守られて戦争回避や抑止力

にもつながる可能性がある。軍がいるから、守られているという考え方はあるのではな

いでしょうか。沖縄県に負担が多いのは事実ではありますが、軍が平和であり、軍が戦

争をとめている可能性もある。沖縄ががんばることで、日本が戦争をしない可能性もあ

るはずです。以上です」

 

判事A「わかりました。次は原告側のBさんのばんです。それでは、Bさん」

 

Nさん「くっ、やばいわ。すぐ反撃か。ここが踏ん張りどころじゃ」

 

HOさん「フーーっ、無理じゃー、沖縄万歳、沖縄万歳」

 

原告側B「いきます。原告代表のBです。弁護側は、戦争回避や抑止力になる可能性が

あると言われましたが、実際、それはあるかもしれません」

 

周りがざわつく

 

原告側B「戦争回避や抑止力になることは大事だ。平和を維持することは、沖縄県民の

願いでもある。しかし、本島を踏みにじられ、いまだにいざこざが起こる。守ってもら

うという観点では私たちの立場を理解したことにはならないとは思います。それに、守

ってもらうことは副次的な物で、本当の意味は、相手の支配、経済的支配や精神的肉体

的支配にあるともいえるかもしれません。この支配構造を棚上げして、戦争回避や抑止

力ばかりいうのは少し観点をずらしているともいえるのではないでしょうか。私たち、

沖縄は基地がほしいのではありません。戦争からの屈辱を払い、これから自分たちで独

立して立っていく気概がほしいのです。だから、永久基地からの脱却を切に願います。

以上です。次は原告側はHAさんに交代します」

 

判事B「わかりました。戦争回避や抑止力につながることを認めながら、その論点以前

に支配からの脱却を願う精神的問題が存在することに触れたのですね。この法廷自体、

日本政府が介在する難しい問題です。扱うことが個人や団体ではなく、国家間の問題に

ほかなりません。それにメスを入れる必要があるのかと思います。HAさんですね。原

告側HAさん、どうぞ」

 

HOさん「やベーー、起死回生の逆転打だ、オレ鳥肌たったよ。名倉さんやばくね」

 

Nさん「やばいわ、やばいわ、やばいわ、相手も本気だわ。全部敵かよ。HAさん頼

むでー」

 

 

(つづく)

 

 

「沖縄訴訟回想」②(ノンフィクション)

 

それから、十年の月日が流れた。アメリカ軍基地が沖縄につくられてから15年たった

ある日のことだった。酔ったアメリカ軍軍人が事故で対向車と人身事故を起こした。沖

縄県民は怒り、訴訟騒ぎになったが、日本との取り決めで、少しの賠償金でその事件は

うやむやになった。その五年後、アメリカが沖縄の基地をアメリカの土地として接収

し、永久基地として日本国政府に認めさせる議定書を締結したことにより、反対運動が

高まった。アメリカに対して断固反対の姿勢をとる沖縄と事を大げさにしたくない日本

政府との間でいざこざが起き、業を煮やした沖縄は日本に対して、訴えを起こす、その

代表団の中にHAさんの名前が載っていた。

 

訴訟内容 沖縄を永久基地からの脱退及び、アメリカ軍の沖縄から及び日本からの撤退

を要求

 

とある新聞社。

 

A「何だよ。この訴訟内容は」

 

B「どれどれ、うーん、これだけ直接的だと、一発でつぶされて終わりだろう」

 

A「こういう場合、どうなるんだ?」

 

B「日本政府が、つぶしにくるだろ」

 

A「この弁護士団有名?」

 

B「ちょっと調べてみるか」

 

A「一瞬の出来事か…」

 

B「歴史の闇だよ」

 

 

原告側控え室

 

原告側A「これは、ちょっとわかりやすくしすぎたかな」

 

原告側B「これじゃあ、日本政府も黙っちゃないだろう」

 

原告側C「おい、弁護団がかわるらしいぞ。これじゃあ、勝ち目がない」

 

原告側A「すごそうな弁護団だな。肩書きがすごい」

 

原告側B「経歴もすごい。このままじゃやられる。沖縄の怒りが伝わらない」

 

HAさん「やばいな。政府が本気になってきたか」

 

原告側C「勝つ必要はない。これはアメリカとの関係もある。あきらめも肝心だ」

 

原告側A「それはないだろう。沖縄は戦争でただ、一つ上陸を経験しているのだぞ。白

兵戦、集団自害があった。これで引いたら、多くの犠牲を裏切ることになりかねん。断

固として戦うぞ」

 

HAさん「オレも戦う。出してくれ。やれることはやるから」

 

原告側A「わかった、戦意のあるもので構成しよう。勝てはしないかもしれない。で

も、最後まで戦おう」

HAさん「アメリカ軍の資料は、国内のものは集めた。沖縄県人としてなすことをや

る」

 

原告側B「くそっ、オレもやるよ。負けるわけにはいかない」

 

原告側A「では、法廷へ行くぞ」

 

全員「おおっ」

 

 

判事A「これより、原告の訴えにより、第1回沖縄の基地脱退、及び、アメリカ軍基地

撤廃の要求訴訟を始める、はじめに原告の訴状を読み上げてもらいます。原告側代表者

お願いします」

 

原告側A「原告代表Aが訴状読み上げをします。私たちは沖縄を永久基地からの脱退及

び、アメリカ軍の沖縄から及び日本からの撤退を要求する。以上です」

 

判事A「ありがとうございます。それでは、原告側より細かい訴状内容をいくつかに分

けて、被告側に要求を出してもらいます。では、原告側」

 

原告側B「それでは、原告代表Bがここは読み上げます。私たちは沖縄の代表です。私

たち沖縄県民は、太平洋戦争で本土上陸、白兵戦、集団自害などさまざまな損害を受け

ました。その上、沖縄本島にまで基地をつくられ、事故や騒音被害など、さまざまな被

害が報告されています。戦後、十五年が過ぎる中、その我慢も限界に達しました。私た

ち沖縄は、今立ち上がります。まず、一つ目の要求は、永久基地からの脱退を要求しま

す。2つ目は、沖縄の基地すべてを撤廃し、恒久的にアメリカの基地にならないことを

要求します。3つ目は、日本全土のアメリカ軍基地を撤廃することを要求します。以上

が私たち沖縄の要求です」

 

判事B「わかりました。その一つ目の要求に対して、被告側の反対弁論をしてくださ

い。被告側の代表者お願いします」

 

弁護側A「弁護団のAです。それでは、反対弁論に入ります。まず一つ目の要求です

が、永久基地からの脱退の要求ですね。外交問題になる可能性が高いので、日本国政府

からある程度の指針を受けて打ち合わせています。それは念頭においておいてくださ

い。日本国政府としては、いい返事はできないとはとれます。永久基地になったのは、

日本とアメリカの友好において、超法規的問題ではあります。逆質問になりますが、な

ぜ、永久基地がいけないのですか。アメリカ軍が、逆に考えれば、守ってくれていると

もとれます。永久基地は、負けたことの負の遺産ともとれます。それでも、永久基地か

ら脱退することを考えますか」

 

判事B「わかりました。この反対弁論に対して何か、対抗弁論をしてください」

 

HOさん「やばいわ、いきなりつぶしにかかって来てるな。原田さん出るかな。やばい

ピンチ」

 

Nさん「ここでとちる訳にはいかない。なんとかしいや」

 

HAさん「原告代表のHAです。対抗弁論にはいります。外交問題といいますが、日本

は、独立国で自分の国で自国の軍に近い、自衛隊を有しています。独立国である以上、

他国の軍隊を入れる必要はないはずです。外交問題なのは知っています。でも、外交問

題に触れなければ、基地問題は解決しません。このままでは、基地はなくなりません。

だから、法廷に来ました。永久基地は、外さなければ、基地であることをとることはで

きません。沖縄の意地にかけて、ここを引くわけにはいかない、以上です、次原告のA

にかわります」

 

判事A「原告側のAさん、対抗弁論をつづけてください」

 

HOさん「フー、何とかいきなり閉幕は防いだか。よかった、よかった」

 

Nさん「やばいわ、心臓がやばかった。これでイーブンやな」

 

 

(つづく)

「沖縄訴訟回想」①(ノンフィクション)

 

Tさん「こんにちは」

 

Nさん「こんにちは、久しぶり」

 

Hさん「おせえよ、、もうゴーヤチャンプル食っちまったよ」

 

Tさん「わるいわるい、ちょっと道が混んでてな、酒買って来たよ」

 

Nさん「何にする?ビンビール?焼酎?サワーなんてのもあるぞ」

 

Tさん「おー、豪勢だねー。まずはビンビールかな。俺の買ってきた焼酎もうまいよ」

 

Nさん「じゃあ、ビンビール一本ね。あとはゴーヤチャンプル一つ追加」

 

店員さん「ビンビールお待たせしました」

 

Tさん「ありがと」

 

Hさん「戦争終わって5年もたつんだな」

 

Nさん「はやいもんだな」

 

Tさん「本土は、新しい建物がバンバン建ってきたぞ。すぐ立ち直ってきちまうよ」

 

Hさん「本土は、はやすぎるわな」

 

Nさん「沖縄だって結構、立ち直ってきているぞ。ただ、まだ、戦争の残骸が残っている」

 

Tさん「本土とは違って、アメリカが上陸しちまったからな。白兵戦、集団自害、沖縄制圧、ひどい目にあったな」

 

Hさん「その上、沖縄にアメリカ軍基地が入ってきちまった。あんな目にあわせておきながらいけしゃあしゃあとどういう神径しているのかね」

 

Nさん「ちっ、ふざけやがってこっちは、あのアメリカ軍上陸を体験しているんだ」

 

Tさん「そうか、名倉、沖縄本島に残った組だったか。やばいな。どうだった。でも、話したくは無いか」

 

Nさん「別に話してもええよ。こういうことは忘れちゃいけないんじゃ」

 

Hさん「オレも聞きたいわ。沖縄県民として知らなきゃいけんわ」

 

Nさん「上陸の一週間前、本土にアメリカ軍が上陸してくるという噂がたった。その後、音沙汰が無く一週間がたったあれは、7月28日だったと思ったよ。ラジオで、アメリカ軍上陸の一報が入った。急いで、外に出てみたが、近くではないらしく、何も起こっている様子は無かった。ただ、空が曇っていて少し暑かったか、いや覚えてないが、何かいやな予感がオレはしたんだ」

 

Tさん「曇っていたか、こわいな」

 

Hさん「それでどうなったんだ」

 

Nさん「沖縄本島組も、日本軍に呼ばれてアメリカ軍のいる南方へ向かうことになった」

 

Tさん「本当にいったんだな」

 

Hさん「よく生きていたな」

 

Nさん「ちゃちゃ入れるなや。南方に向かいだすとポツポツと雨が降り出してな。ジープの窓に雨が当たるのを見ていたのを覚えている。気がつくとジープから降りるように命令が来て、降りてみると10キロくらい先だろうか、爆発音が少しして、かすかに人の悲鳴のようなものが聞こえたような気がした」

 

Hさん「やばいな、これから一週間続くのによく生きてたな」

 

Tさん「たしかにな」

 

Nさん「色々あるんじゃ。とりあえず、点呼を取って部隊で何をやるかを伝えられる、わしは、町民を非難させる役になったんじゃ。島から脱出すればいいんじゃないかという案が浮上して、9割は最終的に島外に脱出することができた…」

 

Tさん「9割逃げられたんだな」

 

Hさん「一割は?」

 

Nさんが横に首を振る。

 

Tさん「ふざけんなよ。許せねえ」

 

Hさん「ふざけやがって」

 

Nさん「オレは本島に残ったんじゃ。4日目の朝、外で爆発音が聞こえた。外に出てみるとかすかに悲鳴が聞こえたと思う。爆撃があり、建物の陰に隠れる。1キロ先に本隊が来ているとの知らせが入る。さすがに死ぬなと思ったよ。近くの民家で悲鳴が聞こえ、いってみることになる。3人一組で民家近くまで来るとアメリカ軍らしい影を見た。民家に入ってみると、もうアメリカ軍の姿は無く。死体が3つ転がっていた。来るのが少し遅かったかとつぶやいた。他の一人が来たのが少しはやかったかとつぶやいた」

 

Hさん「ひどすぎるな」

 

Hさん「許せん」

 

Nさん「少しして、防衛線を20キロ下げることとなり、いったん退くこととなった。一日後、軍のキャンプが直接攻撃をうけ、隊の連中を見失い、命令が途絶えることに町の中心部から少し行ってみると遠くに戦車の姿を見てしまった。銃撃をうけ、3人がじりじりと近ずくいてくる。オレはこの事態を不可能と見たよ。じりじりと後ろに下がりながら、銃撃しようかと一瞬頭をよぎった。5メートル離れたときに、後ろを向いて一目散に逃げ出したよ。銃撃音が、25,6発して足にかすったな。何とか逃げ延びて他の隊に合流することができた。そして、島外脱出して今ここにいるわけだ。あのとき、死ぬべきだったかもしれん」

 

Hさん「本当に実際戦っているとはすげえぜ」

 

Tさん「これがそのときの傷跡か、やばいな。死の瀬戸際を体験したんだな」

 

 

 

ノスタルジー 最終話

 

 

 

何度か、学校で見かけても素通りされた。

1か月後、よもぎの訃報を聞いた。

高橋は、聞いた瞬間、何が起きたか、わからなかった。でも、あの日の意味を理解した。

 

それから、一週間してよもぎの母親から、生前のよもぎの書いた手紙を渡された。

 

高橋へ

 

この手紙をあなたが読んでいるとき、

 

もう、私は、この場所にいません。

 

私は、重い病にかかり、半年前、死の宣告を受けました。

 

絶望の淵にいるとき、軽音部でひいている、あなたのギターに耳を奪われました。

 

この人とだったら、残りの人生すべてつかってもいいと思いました。

 

あの告白した日、私の中では最高の日です。あの日、告白するのに失敗したら、どうしようか前の晩眠れませんでした。

 

手紙をつきかえされた時、心臓が爆発してしまいそうになり、足が震えました。

 

勇気を振りしっぼって、もう一度チャレンジして、成功した時の私は、有頂天でした。

ありがとう。

ライブは、成功してよかった。

死ぬかと思った。

本当は、箱でライブやりたいと言ったけど、やる体力はなかった。

 

「ぶっつけ本番でやる」って言われたときうれしかった。

 

本当は、本番は出ずに終わりにしようと思ってました。

 

文化祭で、歌えた時、高橋の歌声が人の手に届いた瞬間、あの歓声。

震えました。

 

自分が歌ったわけでもないのに、友達に話しまくって自慢しました。

 

しすぎて、嫌がられたほどです。

 

楽しすぎて罰が当たりそう、あなたと別れる時が本当にきつかった。

 

すんなり、「じゃあ、いいよ。」って言ってほしかった。

 

いつもみたいにあの笑顔で笑って帰してほしかった。

 

なぜ、すんなり帰さなかったのですか。恨みます。

 

うそです。

 

感謝します。

 

あなたの歌声は最高です。

 

一緒に、できて最高でした。

 

いつかもう一度、あなたとプロの話がしたい。

 

自分が天才であればいいのに、もう一度、あの舞台で高橋と暴れたい。

 

私のこと、忘れてね。うそ、バカ、天才。だよ。じゃあね。

 

              

                              よもぎより

 

高橋は、夜の闇の中、怒った。

 

「ふざけんな、ふざけんな、ふざけんな」

 

「あいつ、嘘つきやがって、ふざけんな」

 

「ヤボ用って、どこのヤボ用だよ。ふざけてんじゃねえ、いつかお前を殺すぞ」

 

「俺が恨むよ。あいつをね。恨んでもう一度やるよ。あのライブよりすごいやつを、

何度も何度もやってやる」

 

「アマチュアじゃない、プロのライブを見せてやる。見てろよ、必ず一緒にやるぞ。練習しとけよ」

 

「くそっ、必ず世界一のミュージシャンになる。見てろよ、よもぎ。お前にも届く歌を歌うよ」

 

「じゃあな、あばよ、くやしいよ」

 

 

ノスタルジー③

 

 

文化祭は大成功に終了する。

その打ち上げの最中、

 

「俺ら、すこしプロフェッショナルに近づけたかな」

 

「いやお前はまだまだ、俺は今日完全にプロになった気がしたよ」

 

「すごかったな。お客さんみんなホントに感動していたよ、私、あんなに興奮したの初めて」

 

「本当だよな。俺もはじめてだよ」

 

「これも高橋大先生のおかげだよ。お礼を言うよ、ありがとう」

 

「なんだよ。改まって、まあ、当然だけどな」

 

「そっか、当然か」

 

「お客さんを熱狂させて、感動させるのは当然なんだよ」

 

「わかるよ」

 

「私、高橋がすごくなるのわかるんだ。お前すごいよ、一人違うって感じ、例えるなら手漕ぎボートの私に対して、豪華客船くらいに違うよ」

 

「おいおい、言い過ぎだろ、豪華客船でなくて遊覧船くらいだよ」

 

「いや、お前は一人、別次元にいるよ。私は、まだまだだな、やめちゃおうかな」

 

「おいおい、急に何を言い出すんだ。始まったばかりだろ」

 

「いや、初めから決めてたんだ。私今日で高橋から卒業する」

 

「いや、待て、これからだろ。辞めるなよ。なんでか聞かせろよ」

 

「いや、私、高橋に告ったでしょ」

 

「ああ、あったな」

 

「あの時本当に好きだった。だから、思いきって告白したんだ」

 

「あの時、足震えてただろ。俺、あれがなきゃ、断ってたよ。それで」

 

「高橋にくっついてやっていくうちに、あこがれていた自分に気が付いたんだ」

 

「そっか、だから、卒業したいんだ」

 

「いや、今でも好きだし、尊敬してる」

 

「馬鹿にしてるのかよ」

 

「いや、私はそんなことない」

 

「それなら、バンドは続けられんじゃん」

「そうだけど」(涙目で)

 

「続けられない」

 

「なんで?バンドは続けても支障ないだろ。前みたいにずっと一緒にいなくてもさ」

 

「いや、私ずっと考えてたんだよ。私とお前がバンド組んで釣り合うかって…」

 

「それはないよ。仲間である以上、俺は釣り合うかどうかで判断しない」

 

「あなたならそういうよね。結構悪い人だけど、いい人だよね」

 

「そうなんだよ。悪いやつなんだけど、いいやつなんだよ」

 

「残る?」

 

「残らない」

 

「なぜ?」

 

「残らない理由ないじゃん」

 

「残る理由もないでしょ。ヤボ用よ、ヤボ用」

 

「ヤボ用?…男か」

 

「まあ、そんなところよ」

 

「いても、できんじゃん」

 

「やめてよ。ヤボ用なんだよ」

 

「ここまで言ってダメなら、あきらめるよ。さぞかしいい男なんだろ」

 

「お前ほどじゃないよ」

 

「バイバイ、もういいよ。」

 

「バイバイ…」

 

「おーい忘れ物したぞ、取りに来いよ」

 

「明日にする…よ」

 

よもぎが、忘れ物を取りに来ることはなかった。