ガマガエルと小説など

ガマさんとガエルさんが出てきて私の書いた小説などを紹介します

ノスタルジー③

 

 

文化祭は大成功に終了する。

その打ち上げの最中、

 

「俺ら、すこしプロフェッショナルに近づけたかな」

 

「いやお前はまだまだ、俺は今日完全にプロになった気がしたよ」

 

「すごかったな。お客さんみんなホントに感動していたよ、私、あんなに興奮したの初めて」

 

「本当だよな。俺もはじめてだよ」

 

「これも高橋大先生のおかげだよ。お礼を言うよ、ありがとう」

 

「なんだよ。改まって、まあ、当然だけどな」

 

「そっか、当然か」

 

「お客さんを熱狂させて、感動させるのは当然なんだよ」

 

「わかるよ」

 

「私、高橋がすごくなるのわかるんだ。お前すごいよ、一人違うって感じ、例えるなら手漕ぎボートの私に対して、豪華客船くらいに違うよ」

 

「おいおい、言い過ぎだろ、豪華客船でなくて遊覧船くらいだよ」

 

「いや、お前は一人、別次元にいるよ。私は、まだまだだな、やめちゃおうかな」

 

「おいおい、急に何を言い出すんだ。始まったばかりだろ」

 

「いや、初めから決めてたんだ。私今日で高橋から卒業する」

 

「いや、待て、これからだろ。辞めるなよ。なんでか聞かせろよ」

 

「いや、私、高橋に告ったでしょ」

 

「ああ、あったな」

 

「あの時本当に好きだった。だから、思いきって告白したんだ」

 

「あの時、足震えてただろ。俺、あれがなきゃ、断ってたよ。それで」

 

「高橋にくっついてやっていくうちに、あこがれていた自分に気が付いたんだ」

 

「そっか、だから、卒業したいんだ」

 

「いや、今でも好きだし、尊敬してる」

 

「馬鹿にしてるのかよ」

 

「いや、私はそんなことない」

 

「それなら、バンドは続けられんじゃん」

「そうだけど」(涙目で)

 

「続けられない」

 

「なんで?バンドは続けても支障ないだろ。前みたいにずっと一緒にいなくてもさ」

 

「いや、私ずっと考えてたんだよ。私とお前がバンド組んで釣り合うかって…」

 

「それはないよ。仲間である以上、俺は釣り合うかどうかで判断しない」

 

「あなたならそういうよね。結構悪い人だけど、いい人だよね」

 

「そうなんだよ。悪いやつなんだけど、いいやつなんだよ」

 

「残る?」

 

「残らない」

 

「なぜ?」

 

「残らない理由ないじゃん」

 

「残る理由もないでしょ。ヤボ用よ、ヤボ用」

 

「ヤボ用?…男か」

 

「まあ、そんなところよ」

 

「いても、できんじゃん」

 

「やめてよ。ヤボ用なんだよ」

 

「ここまで言ってダメなら、あきらめるよ。さぞかしいい男なんだろ」

 

「お前ほどじゃないよ」

 

「バイバイ、もういいよ。」

 

「バイバイ…」

 

「おーい忘れ物したぞ、取りに来いよ」

 

「明日にする…よ」

 

よもぎが、忘れ物を取りに来ることはなかった。